不登校 フリースクール 相談 カウンセリング の『のぞみ学園』

月刊のぞみ 不登校・登校拒否 相談 カウンセリング フリースクール

「ハミング・ウォーカー」への原稿より

『登校拒否を生きる』
不登校を楽しく、大事に、味わい深く
E引きこもり(行動に現れる:その1)


心の中に一杯溜まった強烈な「不安や恐怖」が「行動」として現れることがあります。「引きこもり」もその一つでしょう。諸君の中のかなりの人が「こもり」ます。自分の部屋に「こもる」人、家の中のどこかへ「こもる」人、時にはトイレや土蔵に「こもる」人もおります。

「こもる」こと自体は問題ないのです(出来れば土蔵やトイレでない方がいいのですが)。何の心配もないのです。登校拒否の諸君はこの時期、登校を拒否し、全員が家に「こもる」のだと言えます。 



訳の分らない「不安・恐怖」の中で、家に、家の中のどこかに「こもる」。何故か分らないけれど、そうしているのが「安全」「安心」で無理がない。「楽しくはなかったけれど、それなりに安定していた」と、かつて答えてくれたKちゃん。しかし、理由を聞いてみても、ほとんどの諸君がどうしてそうするのか答えられません。言葉のレベルよりもっと深いところで、心と身体が連動して起こす現象(安全反応)なのでしょうから。

その姿をそのままそっと大事に守ってあげましょう。「引きこもり」が良いとか悪いとかではなく、その「こもり方」がどんな風なのかが問題なのです。要は、安心してゆったり「こもって」いるのか、責め立てられながら、ヒリヒリする思いで「こもって」いるのか(これは後に尾を引きます)。その違いだけのような気がします。

心の深い部分から発する行動は全て意味があると思います。世間的な常識で判断せず、善悪を急いで決めず、とりあえずその姿をそのまま頂く。
この基本姿勢が登校拒否に伴ういろいろな現象(姿)のほぼ全てに共通して大切なことと思われます。

 F家庭内暴力
(行動に現れる:その2) 
「家庭内暴力」という形で行動に現れることがあります。ご本人にとってもご家族にとっても、つらい大変な現れです。「昨日、大プッツンしちゃった」とA君。「自分であって自分でないような感じだった」とB君。この時は目つきまで別人のように変ります。冷静にコントロール出来なくなった状態です。説得してもダメです。ましてこちらが対抗しようとしたらなお大変なことになります。

「こんな時こそ、親は逃げるべきではない」「父親だったら、正面から身体を張って子供に立ち向かうべきだ」という人がおりますが、全くの間違いです。呑気な机上の空論です。

まず逃げましょう。その状況からさっと離れましょう。逃げずにいたら、暴力は本人が疲れ果てるまで続きます。その時のあなたはただのサンドバッグと同じなのです。終ってそれから醒めたあと、いちばん傷つくのはお子さん本人です。そんなことをさせてはなりません。新たなストレスを加重するだけです。「そうなりそうだな」と予感したら、すっとその場から離れましょう。相手がいなければ家庭内暴力は成立しません。

家庭内暴力はほとんどがお母さんに向けられます。けっしてお母さんが悪いからではありません。育て方に問題があったからではありません。お母さんがいちばん大事な人だからです。この苦しさをいちばん伝えたい人、いちばん分ってくれる人だからです。

つらい大変な時ですが、自分を責めて、お母さん自身が元気なくすことのないように。「苦しいのは俺一人で沢山だ。テメエぐらいは情けない顔をするな」と言ったC君。
一見、無理難題を吹っかけているように見えて、実は彼の切実な心の叫びなのです。

[特6]
A君のこと(頑張る危険)
東北のある県庁所在地から相談に見えたA君のお母さん。中1、中2と穏やかな校長先生で、「無理しなくていいから」ということで、ゆっくり家で登校拒否をしておりました。それなりに元気も出てきておりました。
中3になったとき、新しい校長が赴任してきました。厳しい方で、彼の登校拒否を許しませんでした。根性の問題、他の生徒への影響を理由に、「年間80日出てこなければ卒業させない」という通告が出されました。今までこの校長は「出会った不登校の子どもを全て治してきた」と豪語しておりました。

A君の受難が始まりました。顔面蒼白になりながら校門まで行って手を付いてきたり、生徒玄関まで行ったり。いずれも他の諸君が帰った夜の9時、10時といった時間です。とにかく「どんな風でもよい、学校に来る意志をはっきり示せばよい」「頑張った努力の跡を形で示せばよい」「甘えは許さない」ということでした。夜の夜中に出かけて行って校門に手を付いてくる、人気のない生徒昇降口の前に立ってみる。こんなことに何の意味があるのでしょう。根性を試されたのです。「根性焼き」と同レベルの低さです。

「80日間出席しなければ卒業できない」などという法的な決まりはどこにもないでしょう。校長は嘘をついたのです。しかし、家族と本人は必死でした。完全に追い詰められました。必死になってその全く意味のない、しかし猛烈なストレスが新たにかかる空しい苦行を85日やりました。なんと5日おまけをつけたのです。

卒業の頃にはかなりの重症になっていました。心はほとんどパニック状態でした。それでもフラフラしながら市内の定時制を受けたのです。元々勉強の出来た彼ですが、結果は不合格でした。僕はかつて定時制の教師をしたことがありますが、定時制には「ここで落ちたら、この子は行く所がなくなる」「定時制は最後の所だ」という気持ちが学校の側にあります。だから、定員を大幅に越えていない限り、出来るだけ不合格を出さない配慮がなされます。定員に満たなかったその定時制を落ちたのですから、おそらく理由はたった一つ、「彼のパニック状態があまりにひど過ぎて、とても就学に耐えうる状況ではない」と判断されたのです。

校長は2,3年して栄転していきました。A君はその後2年間地獄のような苦しみを、パニック状態を家族と共に経験しました。

やっともう一度動けるようになるまでに、その後2年の歳月を要しました。まことに許しがたい、しかし、実際にあった、信じられないような乱暴な話です。

(状況をいろいろ変えてあります。まず場所から、ご家族のことも)






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