パニック障害
(例えば「過呼吸」)
A県の夏子さん。苦しさの限界まで来たとき、突然「過呼吸」(過換気症候群)が起こりました。周囲の人たちもさぞびっくりしたことでしょう。しかし、いくら周りが慌てふためいてもどうしようもなく、その過呼吸の限界のところで気を失いました(注1)。そして、しばらくして気がつき、あの嵐のような苦しい状態は嘘のように収まっておりました。
訳の分からない苦しさの限界にまできたとき、人によっては「過呼吸」が起きるようです。心の中で一杯になったものの現れ方、吐き出しの姿は誠に人様々です。過食になる人、拒食になる人、「さあっ」とアトピーが出る人などいろいろなのです。しかし、一度「過呼吸」というチャンネル(道すじ)が出来ると、比較的その人は同じパターンを繰り返すようです。アトピーでも、頻尿でも、食に関ることでも皆同じ傾向があります。
一度「パニック障害」が起きると、例えば電車だとか、多勢の人混みの中だとかへ出られなくなります。そのこと自体が「恐怖」になります。当然、行動の範囲が狭(せば)まります。しかし、基本のところではきっと「今は無理をしてはダメだよ」「今はあまり刺激の強い所へ出るのはよそうね」という、心の深い部分からの合図のようにも思われます。
外に出るのが怖い時は、「どうやって外へ出たらよいのか」を考えるよりも、無理をして外に出ないでいる方が心に対して優しいと思います。心は健気に一所懸命に頑張ってくれていました。頑張り過ぎるほど頑張ってくれていました。無理をせずに、しばらく家に「こもって」いれば、また必ず出られるようになります。
ただし、そうはいっても勤めている人もいますし、どうしても家から出なければならない用事がある人もいるかも知れません(例えば「主婦」など)。そんな状況の中に日常的にいる人も多勢いることでしょう。そんな時にはカウンセリングを受けるのも大事ですし、お医者さんに相談して、程よい安定剤・抗うつ剤などを処方してもらうこともあっていいと思います。
「過呼吸」。大変なことが起きたようにも見えますが、実は心の奥深いところから発せられた意味のある信号です。周囲がそのことをちゃんと分かっていれば、そして、ご本人もやがてそれに気づけば、けっして危険な、とても困難なものではないのです。心配のない「心の」意味ある現象なのです。
注1
過呼吸という激しい状態、その苦痛の限度のところで夏子さんは気を失いました。苦痛の限度、恐怖の限度のところで、もうこれ以上は耐え切れないところで、人は気を失います。僕も苦痛で一度、恐怖で一度気を失った経験があるのですが、その苦しみから一時的に解放されました。気がついた時は病院だったり、朝が来ていたり。人間の心は何と精妙に出来ているのかと驚かされる程です。
ご存知の方も多いと思いますが、過呼吸が起きたらビニール袋を口と鼻に当て、しばらくその状態で呼吸していれば、ひとりでに収まります。そういった咄嗟(とっさ)の対応が出来る知恵もまた必要です。
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