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医療とカウンセリング


笠原 嘉(よみし)先生の『軽症うつ病』という本をかつて読んだことがあります。先生の人柄まで伝わってくる素敵な本でした。僕らの出遇う多くの諸君とそのまま重なりました。登校拒否の諸君、とりわけかなり苦しんでいる諸君は、おおむね先生の言われる「軽症うつ病」の範囲に入りそうです。

一見、僕らの見方とかなり違うように見えて、実は見る方向・視点が違うだけだと思われました。紫色を青の方から見れば青の一部に見えます。赤の方から見れば赤の範囲に入るでしょう。かなりの諸君が紫色なのです。

ではどう対応するのか。これが誠によく似ているのです。先生は服薬も含めた医療の必要を説きます。僕らも全く同じです。カウンセリングの必要も説いております。これも同じです。必ず治ると言い切っております。僕らは、必要があって起きた「心の安全反応」ですので、そのままで意味があると思っておりますから、あえて「治る」とは言いません。

しかし、笠原先生の言葉の背後にある「人に対する温かさ、展望の明るさ」は、はっきり感じられます。先生は「3ヶ月で必ず治る」と言い切っております。僕らは心のことだからあえて期限はつけずにおります。しかし、これも、「言い切られる」ことがどんなに苦しい人にとって救いか、それもはっきり感じられます。

医学と心理学、医療とカウンセリングということで立場は違いますが、同じ人間を見るということでは共通して流れる大きなものがあります。人間という存在に対する「展望の明るさ、温かさ、尊厳」とあえて言ってもいいのでしょうか。

ここからは僕の意見です。人が心のことで苦しい状況になった時、そこをどう通り抜けるのか。結局通り抜けるのは、そこを抜け出し、「なおって」いくのは、その人ご本人とそれを背後からしっかり支えている「大いなる生命(いのち)」です。

連続したあるいは唐突の激しいストレスによって、ある苦しい状況が起きました。そのとき大事なことは更に新たなる大きなストレスを加重しないこと、出きるだけ楽にこのときを通り抜けることだけだと思うのです。

その手助けを、ほんの若干の手助けを医療もカウンセリングもすることが出来る。あくまでも「なおる」「なおす」のはご本人とその背後にある大きな力だけである。医療もカウンセリングもそれ以上のものではない。そこにとどまっているべきだ、それ以上踏み込んではならない・・・そんな風に僕には思われるのです。

その範囲内で、初めて医療もカウンセリングも成立します。相互の連携も成立すると思います。そのことを笠原先生の本から改めて教えてもらいました。
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