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学校の復権
「学校の復権」といったことを僕はしきりに思うのです。僕自身は学校大好き人間、学校大事人間で育ちました。国民学校1年生で敗戦でした。戦地帰りのささくれ立った先生方が何人もおりました。彼らにもいろいろ大変な混乱があったことでしょう。昭和20年代が僕の小・中・そして高校生活の大部分です。
その前半はいわゆる戦後の民主教育の風が爽やかに吹いた時代です。大事なものをいっぱい経験させてもらいました。いい先生に何人も出遇いました。混乱と貧困の時期だったとは言え、やはり教育にとって幸せな時代だったように思います。教育に夢がかけられる時代でした。
医者になろうか宗教関係へ進もうか、報道関係に行こうか、あるいは水産、農業・・・、いろいろ考えたのですが、当時の僕にいちばん魅力的だったのは教職の仕事でした。僕の中には野口英世だとか松下村塾だとか、教育の夢と重なる部分がいっぱい詰まっておりました。教職・学校に光り輝くものを感じておりました。
26年間教職の道にいて、その後この仕事をしたいために辞めたのですが、教職が嫌になったからではありません。引き続き僕の心の中は今でも教師です。ただし、教職の仕事について僕の中でかつてのような魅力と光彩が薄らいできていたのも事実です。 平成元年より学校を離れてこの仕事をやっております。相変わらず学校は子供にとって若者にとって家庭に匹敵する重要な場所だと僕は頑(かたく)なに思い込んでおります。「学校は必ず復権する」と思っております。子供や若者にとって学校は場合によっては家庭以上に安全・安心の場所です。
「知る喜び、解る喜び、創る喜び」を仲間と一緒にいっぱい経験できる素敵な場所だと思っております。その喜びを充分経験しなければ「まともな」大人になれないとさえ思っております。学校は再び(子どもにとっての)主役の座につかなければならないのです。 そのためには何が必要なのか。学校を復権させるカギは何なのか。それがそのままこの前半で述べた二つの状況の克服と重なります。 「知る喜び、わかる喜び、創る喜び」を保証するためには、ゆったりとした充分な時間の保証が必要です。競争原理とはおよそかけ離れたところに教育は立ち返らなければなりません。仲間と一緒にそれが出来る、本来学校とはそんな場所のはずです。人間のやることの中でも最も魅力的なことの出来る場所です。今日もいっぱいいろいろやった、明日もまたわくわくしながら出かけてこよう・・・学校はそんな場所です。 いろいろな規制も、次々と起きる問題の中で生じてきました。部活による引き締めもそうでしょう。校風・風紀の引き締めも同じでしょう。某県のある高校の話です。入れ物は全て学校指定の鞄と風呂敷のみ。その風呂敷の色も必ず紫。それ以外の入れ物も色も一切ダメ。そんな信じられないような決まりを学校が、というよりは時の校長が作りました。信じられないような規制です。規制自体も異常ですが、それに大人しく10代後半の若者たちが従っているとしたら、そのことは更に問題です。教員集団も同じです。そら恐ろしささえ感じます。 若者はとりわけ時代の流れに敏感です。あらゆる年代の中でも一番敏感に一番率先していろいろを取り入れていく年齢層です。そんなことはそのまま彼等に任せておけばいいことです。学校はひたすら本来の目的のところで勝負していけばいいのだと僕は思います。 「開かれた学校」への努力が為されております。学校の運営に生徒を含めた三者会議、四者会議をする所が出てきております。未来につながる大事な動きです。 登校拒否の理解についても「我々が拒否されたのだ」という反省に立たない限り、学校の新しい取り組みは始まりません。その認識に立てば必ず未来につながる素敵な展開が始るはずです。 フリースクール等新しい動きは次々と出てきますが、その中でいわゆる学校は充分に復権する余地を持っております。教育は金がかかるのです。本当の意味での「公教育」の存続は避けられないのです。僕はそのことに関してはかなり強い「こだわり」を持っております。 ただ、それはこれからのこと。10年くらいのスパンで展開していくことです。「すぐ間に合うように」というわけにはいきません。その間を一人のこぼれる諸君もなく通り過ぎなければならないのに、一体どのくらいの諸君を学校は、私たちは「こぼして」きたことでしょう、「自殺」といったまこと辛い形などで。
どうしても行けなくなった諸君には無理をさせない。それだけでいいのです。「学校否定」等といったコワイものではないのです。「そうなった諸君について、しばらくの間」でいいのです。 時間はかかるけれど正確な認識と明るい確かな展望に基づく努力。そして同時に、今、登校拒否している諸君に対して「無理はさせない」という度量の大きさと柔軟さ。その二つが学校やそれに関わる者たちにあれば、この現実を、学校や諸君がおかれている状況を克服できるはずです。
そのところに今、教育に関わるものが避けようもなく直面させられているのだと思います。
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のぞみ学園
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